時代の流れとともに、企業が構築するべき情報セキュリティ体制の形は変化していきます。
また、近年は社員にスマートフォンやタブレットを支給する企業も多い時代となり、それと併せて“EMM”を導入する企業も増加しています。
今回は、EMMの概要や導入のメリット・デメリット、選定方法などについて解説しましょう。
EMMの概要
企業における社用スマホ、タブレットなどを総合的に管理するツールのことを“EMM”といいます。
これは、“Enterprise Mobility Management”の略であり、“エンタープライズモビリティ管理”とも呼ばれるものです。
社用スマホやタブレットなどの端末を支給する企業は、情報セキュリティ事故が発生しないように、適切な情報管理をしなければいけません。
例えば、従業員が社用端末を紛失した場合、企業や取引先、顧客の機密情報が漏えいしてしまう可能性があります。
また、社用端末がウイルスに感染してしまった場合も、同様の被害が想定されます。
EMMは効率的かつ安全に端末情報を管理できるため、社用端末をアクティブに活用する企業にとって、導入しない手はないツールだと言えます。
EMMの種類は主に3種類
企業が導入すべきEMMには、主に3つの種類があります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
①MDM
EMMの中でも、社用スマホやタブレットを管理するソフトウェアを指し、主に以下のような機能を実装しています。
端末を失くした際、離れたところからロックやデータ削除を行う
業務用アプリの一括管理、OSのアップデート
端末を使用する従業員の管理
②MAM
端末自体ではなく、従業員がそれらで使用するアプリケーションを管理するソフトウェアを指し、主に以下の機能を有しています。
アプリケーションとデータの分散管理
業務とプライベートの分離
データ通信の暗号化
機密情報をプライベート部分に移すなどの行為を制限する
③MCM
業務に必要なコンテンツを管理するソフトウェアのことで、主に以下のような機能を備えています。
端末から社内コンテンツにアクセスする際必要なセキュリティ性の高い通信環境を構築する
端末からのデータ保存を制限する(閲覧は可)
特定のコンテンツに対するアクセス権限の管理
導入のメリットについて
EMM導入のメリットとしては、何と言っても端末利用に伴うセキュリティリスクを軽減できることが挙げられます。
具体的には、紛失や盗難、不正利用、情報漏えい、ウイルス感染などのリスクに対して力を発揮します。
また、EMMの目的は、あくまで多くの端末を一元管理することにあります。
したがって、導入したからといって、必ずしも社用端末の利便性が低くなるわけではありません。
導入のデメリットは?
EMMは非常に便利な管理ツールですが、選び方を間違えると少し手間がかかるものになります。
近年は、さまざまなベンダーが独自のEMMをリリースしています。
したがって、同じタイプのものだからといって、まったく同じ機能を実装しているわけではありません。
また、タイプの違うEMMを複数導入することになると、EMMの本来の目的である“一元管理”は難しくなりますし、コストもある程度高くなります。
EMMの選定方法
では、企業はどうやって導入するEMMを選定すればいいのでしょうか?
①マルチOS対応商品を選ぶ
EMMを導入する際は、なるべくマルチOS対応のものを選びましょう。
これは、iOSやAndroid、Windowsなど、メジャーな複数のOSに対応しているものです。
このようなタイプを選ぶことで、企業は社用端末だけでなく、取引先のパソコンともEMMを連携させることができ、さらに情報管理がしやすくなります。
また、たとえ今後OSシェアが変わったとしても、マルチOS対応であれば、その都度EMMを変更させる必要もありません。
②サポートが充実している商品を選ぶ
EMMの運用には、高い安定性が求められます。
多数の社用端末を一元管理するわけですから、EMM自体に何かトラブルが発生すると、社内の影響は非常に大きくなるでしょう。
したがって、EMMを選ぶ際は、なるべく有事の際のサポートが充実したものを選びましょう。
サポート体制については、必ず各ベンダーによって公表されているため、欠かさずにチェックしてください。
EMMは決して完璧なツールではない
社用端末を活用する企業には、「EMMを導入しておけば100%安全」と考えているところもあるかもしれませんが、その考えは間違いです。
例えば、端末紛失時の遠隔操作に関しては、実行からデータ削除まである程度時間がかかるため、その間機密情報は危険な状態のままとなります。
また、端末自体の電源が入っていないと、離れた場所からデータが削除できないことも考えられますので、そこは留意しておきましょう。
まとめ
今回は、EMMに関するさまざまなことを解説してきました。
EMM市場は、年々拡大の一途を辿っており、数々の大企業がすでに導入しています。
また、今後はクラウド型のEMMも多く登場する見込みであり、導入コストも抑えられるため、中手企業でも導入しやすくなるでしょう。
したがって、これから社用端末の導入を考えている企業は、必ずEMMもセットで考えなければいけません。